海外感染症流行情報

海外医療通信(2021年5月号) 東京医科大学病院 渡航者医療センター

海外感染症流行情報 2021年5月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの累積感染者数は5月下旬までに約1億7000万人、死亡者数は約350万人にのぼっています(米国ジョンホプキンス大学 2021-5-25)。世界全体としてみると、5月上旬から感染者の発生数は減っており(WHO Corona virus disease 2021-5-19)、ワクチン接種の拡大がその要因の一つになるでしょう。その一方で、南アジア(インドなど)、東南アジア(マレーシアなど)、東アジア(日本など)では感染者数が増加傾向にあり、これは変異株の流行によるものと推測されます。さらに、南半球が冬の季節を迎えつつあることから、アルゼンチンや南アフリカなどで感染者数が増加しています。今後、世界的にワクチン接種が加速することで流行は収束に向かうと予想されますが、インド型など新しい変異株の流行も拡大しており、この先の流行予測を難しくしています。
なお、日本政府は5月25日現在、緊急事態宣言を10都道府県に発出しており、水際対策の強化も継続されています。日本への入国にあたっては、検疫所のホームページなどから十分な情報を入手してください。新型コロナウイルス感染症の検疫手続き (forth.go.jp)

(2)アジア:デング熱の流行状況

東南アジア各国のデング熱患者数は例年より少なくなっています(WHO西太平洋 2021-5-20)。マレーシアは累積患者数が9,000人で昨年同期の25%、フィリピンは1万7,000人で昨年同期の60%の数です。一方、ベトナムは2万4,000人で昨年とほぼ同数になっています。シンガポールは2,000人と昨年に比べて大幅に減少していますが、従来みられなかた3型や4型のウイルスが検出されており、今後患者数が増加する可能性があります(Outbreak News Today 2021-5-1)。

(3)アジア:アジアのポリオリスク国

米国CDCはアジアにおける最新のポリオ感染リスク国を発表しました(CDC Traveler’s Health 21-5-13)。これには野生株が流行しているパキスタン、アフガニスタン、イラン(医療施設や難民キャンプのみ)とともに、ワクチン株の流行がみられるマレーシア、フィリピン、タジキスタン、イエメンが入っています。感染リスクのある国に滞在する際には、ポリオワクチンの追加接種を受けましょう。

(4)アフリカ:コンゴでのエボラ出血熱流行が終息

今年2月から発生していたコンゴ民主共和国東部でのエボラ出血熱の流行は、5月4日に終息宣言が出されました(WHO 2021-5-4)。今回の流行では12人の患者(疑いを含む)が発生し、うち6人が死亡しています。なお、西アフリカのギニアでも、1月からエボラ出血熱の流行がみられており、5月には新たな疑い患者も発生している模様です(WHOアフリカ地区 2021-5-4)。こちらは現在までに確定患者が16人で、12人が死亡しました。

(5)北米:米国各地で下痢症が流行

今年は米国各地で下痢症の流行が報告されています。東部ワシントン州では腸管出血性大腸菌(O157)による下痢症患者が多発しており、7人の重症例(溶血性尿毒症症候群)も報告されました(Outbreak News Today 2021-5-21)。現地で販売されているヨーグルトが原因と考えられています。西部コネチカット州ではドーナツを原因とするノロウイルスの流行が発生しています(Outbreak News Today 2021-5-20)。また、サルモネラによる下痢症がノースカロライナ、アイオワ、バージニアなど全米の多くの州で増えており、鶏肉からの感染が疑われています(Outbreak News Today 2021-5-23)。

(6)南米:ブラジルでチクングニア熱患者が増加

ブラジル北東部のペルナンブコ州で、今年に入りチクングニア熱の患者が増加しています(Outbreak News Today 2021-5-22)。5月までに患者数は473人にのぼっており、昨年同期の1.5倍の数になります。チクングニア熱は蚊に媒介される疾患で、デング熱に似た症状をおこします。昨年の新型コロナ流行以降、蚊の駆除が停滞していることなどが患者数増加の原因と考えられています。