海外感染症流行情報

海外医療通信(2022年7月号) 東京医科大学病院 渡航者医療センター

海外感染症流行情報 2022年7月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

7月に入り新型コロナウイルスの感染者数は世界的に増加傾向にあります(WHO Corona virus disease 2022-7-20)。この原因はオミクロン株BA.5への置き換わりが進んだことによるものです。とくに日本を含む西太平洋地域で感染者数が急増しています。西ヨーロッパや中東でも7月上旬に感染者が増えましたが、中旬以降はピークに達している模様です。なお、新たなオミクロン株の派生型としてBA.2.75が今年6月にインドで報告され、その後、世界15か国(日本を含む)で確認されています。スパイク蛋白の変異状況からは、BA.5よりも感染力がさらに強い可能性があり、WHOなどでは監視を強めています。

(2)全世界:サル痘の流行状況

WHOは7月23日にサル痘の世界的な流行について公衆衛生上の緊急事態であることを宣言しました(WHO 22-7-23)。患者数は世界75か国で1万6000人にのぼっており、スペイン、ドイツ、米国、英国などで多くなっています。患者は男性間性交渉者(Men who have Sex with Men :MSM)が多く、感染者との性行為などによる濃厚接触で感染が拡大している模様です。

(3)全世界:小児の急性肝炎

小児に発生している原因不明の急性肝炎の患者も増加しています。7月上旬までに患者数は世界35か国で1000人以上となり、22人が死亡しました(WHO 22-7-12)。患者の発生は英国や米国で多くみられており、日本でも60人以上の可能性例が報告されています(厚生労働省 22-7-1)。原因は不明のままですが、米国での調査結果ではアデノウイルスの可能性が高いとのことです(New England Journal of Medicine 22-7-13)。

(4)南半球:季節性インフルエンザの流行

南半球で拡大していた季節性インフルエンザの流行は次第に鎮静化しています(WHO Influenza 22-7-11)。オーストラリアやニュージーランドはピークを迎えており、南アフリカや南米のチリではピークを越えた模様です。流行株としては、オーストラリアやチリなどでA(H3N2型)、南アフリカでA(H1N1型)が主に検出されています。今年の南半球では、秋の終わりの5月末から季節性インフルエンザの流行が始まり、本格的な冬の前に流行が収束しています。今年の北半球の冬も同様な流行状況が予想されます。

(5)アジア:東南アジアでデング熱患者が増加

東南アジア各国でデング熱患者が例年より大幅に増加しています(WHO西太平洋 22-7-14)。今年の累積患者数はマレーシアで2万6000人、フィリピンで6万4000人、シンガポールで1万8000人、ベトナムで10万人と、いずれも昨年の2倍前後にのぼっています。東南アジアはこれから雨期や暑期を迎えるため、患者数がさらに増加することが予想されます。

(6)アフリカ:ガーナでマールブルグ熱患者が発生

アフリカ西部のガーナでマールブルグ熱の患者が2人発生しました(WHO 22-7-17)。患者は26歳と51歳の男性で、両名とも死亡しています。マールブルグ熱はコウモリから感染するウイルス性出血熱です。もともとはアフリカ中部が流行地域ですが、2021年にアフリカ西部のギニアで患者が初めて発生しました。今回のガーナの事例は同国で初めての患者発生になります。

(7)北米:米国のニューヨーク州でポリオ患者が発生

米国・ニューヨーク州のRocklandでポリオ患者が発生しました(米国ニューヨーク州保健局 22-7-21)。患者は20歳男性で今年6月に両足の麻痺を発症し、ワクチン株由来の2型ポリオウイルが検出されました。発症前に東欧のポーランドとハンガリーを旅行しており、そこで感染した可能性があります。米国では2013年以来のポリオ患者の発生になります。